猫まち

山崎るり子・みじか詩

   ミイヤ(たいぞうさん1)

ミイヤはたいぞうさんの猫だった

ひとり暮らしの小さな家に

暗くなるとやってきた

たいぞうさんはミイヤの人間だった

たいぞうさんの布団はたいぞうさん

濃い匂いがしていい気持ちだった

 

 

 

   ミイヤ(しずえさん4)

「ミイヤおいで」

しずえさんは今もしんとした畑でミイヤを呼ぶ

しずえさんはミイヤの人間だったので

ミイヤはちゃんとやってくる

風が草を揺すり

ミイヤが近くにいると教えてくれる

しずえさんは草むしりをはじめる

 

 

 

   ミイヤ(しずえさん3)

ある日から畑にミイヤが姿を見せなくなった

このごろ痩せてきてヨロヨロと歩いていた

きっとひとり 遠くへ行ったのだろう

もう帰ってはこないだろうとしずえさんは思った

畑が広くなっていった