猫まち

山崎るり子・みじか詩

   ヨモタさんちの猫(5)

「帰ってきたとき家に猫がいたら

 帰ってきた猫は悲しいよ

 猫を待っている者は猫を飼えないんだ」

ヨモタさんのお母さんは時々夕暮れの町に出る

塀の裏 路地の奥 植え込みの端 側溝の陰に

じぃっとしている四つ足の生きものの気配

お母さんは気配を集めて家に帰る

ヨモタさんちには気配だけの猫がいる