猫まち

山崎るり子・みじか詩

   ヨモタさんちの猫(9)

風の強い晩,ヨモタさんが帰ってこないお母さんを捜しに出ると

空き地の塀の角に大きな花

花のまん中に丸くなって眠っているのはお母さんだ

「さあさあ帰りましょう」ヨモタさんが引き起こすと

花びらは猫になってちりぢりに散っていき

「お前の手はいつも冷たいねぇ」お母さんが笑っている

風が塀を登ってしゅっと天まで吹いて

雲の中の月を揺らす